我が国では2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるなど、加速度的に進行する超高齢社会に対して “医療費の増加抑制”と“良質な医療サービスの提供”を同時に実現するために、「地域包括ケアシステムの構築 と医療機能の分化・強化、連携の推進」をはじめとして、さまざまな制度改革などが進められています。このような状況を背景として、医療・医薬品業界を取り巻く環境は大きな変化を迎え、業界再編が加速することが想定されます。
調剤薬局業界では、2021年8月より、患者さまが自身に適した薬局を選択できるよう、特定の機能を有する薬局の都道府県知事による認定制度が開始されました。この制度により、在宅医療や、入退院時を含め他の医療機関との服薬情報の連携に対応できる「地域連携薬局」及び、がん等のより高度な薬学管理への対応や高い専門性が求められる「専門医療機関連携薬局」の認定が始まり、今後ますます患者さまのニーズに応えられる薬局づくりが求められております。また、かかりつけ機能の強化と活用、質の高い在宅医療、医療DX推進体制等への評価に重点を置いた診療報酬改定がなされるなど、地域の医療機関として薬局・薬剤師に求められる役割が拡大するとともに、大きな変化への対応力が求められています。
当社グループでは、これまで電子お薬手帳「お薬手帳プラス」を活用した服薬情報の一元管理や、患者さまに応じた服薬指導の実施、医療機関連携、調剤後の相談・フォローの充実といった対人業務へ積極的に取り組むとともに、自社開発の日本調剤オンライン薬局サービス「NiCOMS」によるオンライン医療の普及拡大や電子処方箋制度への対応等にもいち早く取り組みを行っております。さらに、患者さまにさらなる良質な医療サービスを提供すべく、業界に先駆けて数多くの専門医療機関連携薬局・地域連携薬局としての認定を取得しており、地域の医療機関連携や高度医療のハブとなる薬局店舗作りと高い専門性を有する薬剤師の育成に注力しております。
医薬品製造販売事業においては、ジェネリック医薬品の数量ベース使用割合について「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ、2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」とする目標が継続されるとともに、「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」とする等の副次目標が新たに定められ、引き続きジェネリック医薬品の拡大が求められております。さらに、2021年度以降は、2年に1度の通常の薬価改定に加え中間年における薬価改定が実施され、毎年薬価が改定されるなど、ジェネリック医薬品業界は大きな変化の時期を迎えております。また、ジェネリック医薬品の普及に応じて、従来以上に安定供給体制、品質に対する信頼性の確保及び情報収集・提供体制の整備・強化等が求められており、「誰もが一番に相談したくなるヘルスケアグループ」を掲げる当社としては、これらの要請に応えていくことが果たすべき社会的責任であると認識しております。
医療従事者派遣・紹介事業においては、かかりつけ薬剤師制度の開始により薬剤師事業のマーケット需要が、派遣から紹介へと大きく変化しております。当社グループでは、いち早く需要の変化をとらえて派遣事業から紹介事業へのシフトを進めるとともに、メディカルリソースブランドの認知向上による薬剤師事業のシェア拡大を進めております。加えて、医師事業においても、2017年以降取組みを強化し全国展開を図ってまいりました。2020年11月 からは、産業医業務の提供を開始し、企業経営において重要性を増す健康経営の要請に応える等、引き続き人材市場の需要に応えるべく更なる事業拡大に取り組んでまいります。
当社グループは、大きな事業環境の変化を乗り越え、業界再編を勝ち残る企業グループを指向し、グループ各社がそれぞれ経営の効率化を進め、生産性を向上してまいります。加えて、新グループ理念である私たちの使命「すべての人の『生きる』に向き合う」のもと、サステナビリティ経営を強化し、社会課題の解決を通じて持続可能な社会の発展に貢献してまいります。