「栄養」のプロが薬局から支えるがん患者さまの生活

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日常生活の中のがん治療

がん患者における入院患者数・外来患者数の推移折れ線グラフ
厚生労働省「令和2年患者調査」より当社作成

日本人の死因に占める割合のうち、最も多いものはがんである*1と言われています。

がんの治療を「入院」と「外来(通院)」の2つの手段で分けて見ていくと、2005年(平成17年)を境に外来の患者数が増加傾向にあることが分かります。これは、経口抗がん剤(飲み薬)の開発、早期発見のための検査技術革新などにより、「仕事や家事育児と両立しながら通院でがん治療を受ける」という選択肢が増えたことに起因しています。医療の発展が、入院よりも低コストで、罹患前の生活をできるだけ維持しながらがん治療を受けられる社会への移行を後押ししているのです。

*1 厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」より

この移行に伴い、地域の受け皿にも変化が生まれています。そのうちの1つが2021年8月の改正薬機法施行により生まれた「専門医療機関連携薬局」です。これは薬局に対する認定制度で、がんをはじめとした専門的な薬学管理が必要な患者さまに対して、病院などの他の医療提供施設と連携を行い、特殊な調剤に対応できる薬局を明示する仕組みです。各都道府県知事より認定されるこの制度は、患者さまが日常生活の中で専門性の高い医療を享受できる薬局を選びやすくするために、国を挙げて推進されています。


専門医療機関連携薬局には、がんの専門性に対する認定を受けた薬剤師を配置することが必要です。この認定のうちの1つである、日本臨床腫瘍薬学会による「外来がん治療専門薬剤師」認定*2において、薬局所属の資格取得者のうち、約3人に1人を日本調剤の薬剤師が占めています*3。日本調剤ではがん治療と日常生活の両立に向けて、地域の中での連携強化に大きく力を入れています。

*2 認定取得には、特定の講習への参加や、試験への合格、外来がん治療に介入した事例報告に加え、病院または薬局での薬剤師としての5年以上の勤務経験が求められる

*3 2022年6月現在

がん治療に向き合うのは薬剤師だけではない

日本調剤 柏の葉薬局 外観

がん治療における薬局・薬剤師の役割が高まる中、患者さまの生活をより深く支えるためのもう一つの存在があります。それが管理栄養士です。日本調剤では一部の薬局に管理栄養士を配置しています。そのうちの一人が、千葉県・日本調剤 柏の葉公園薬局の齋藤です。柏の葉公園薬局は、応需する処方箋の9割以上を門前の国立がん研究センター東病院が占める、専門医療機関連携薬局です。

待合席に座る患者さまに話しかける管理栄養士

齋藤(以下略)「日本調剤の一部の店舗には、管理栄養士が在籍しています。薬局によって応需する処方箋は異なるので、未病対策に特色があったり、地域の健康拠点として幅広い役割を担ったり、当薬局のように、がん患者さまへの対応をメインにしていたりなどさまざま。ただ変わらないのは、管理栄養士として、日々のくらしの中にある、食事(栄養)から患者さまのサポートを行なっているということです。」

日常生活に不可欠な「食」だからこその相談がある

「ひとくくりにがん患者さまといっても、栄養相談の内容はさまざまです。抗がん剤の副作用によって、食欲が無くなったり、味を感じなくなってしまったり。がんは、体重・筋肉減少や栄養状態の悪化を引き起こします。例えば、その予防・対処として栄養剤が処方された際、患者さまが栄養剤と食事をどのようなバランスで摂取するか――栄養状態の評価を常に行い、食生活の包括的な対応を行うのが管理栄養士の役目です。」


「また、患者さまと一緒にご来局されるご家族から『ごはんを作っても、食べてもらえなくて苦労している』『がん患者に必要な食事内容を教えてほしい』といった相談もよく伺います。食事は日常生活に不可欠ですよね。だからこそ、同居しているご家族が持たれているお悩みも一緒に解決していくことが重要です。ご家族が定期的に相談に来られることもありますね。」

柏の葉公園薬局では、管理栄養士による患者さま応対の仕組みづくりが進んでいます。例えば、がん悪液質に*4適応を持つ「アナモレリン塩酸塩」という薬が処方されている患者さまには、薬剤師と連携しながら齋藤が毎回栄養指導を行っています。がん悪液質の治療は薬物治療だけでは十分な効果を得るのが難しいとされており、薬により食欲が改善した患者さまに対し、栄養学的視点から体重増加をサポートします。

*4 がん患者に多くみられる合併症の1つで、体重減少や食欲不振を引き起こす

薬剤師と管理栄養士の連携が、患者さまの生活を深く支える

薬局内で薬剤師と話し合い、連携する管理栄養士

「薬剤師の世界から見えることと、管理栄養士の世界から見えることはそれぞれ違います。なぜなら前提としている専門知識が異なるからです。


例えば、むくみについて悩まれている患者さまに対して、薬剤師はがんそのものがむくみを引き起こしている可能性を考え、管理栄養士である私は、血液検査の結果から原因を探って、足りない栄養素を補う栄養指導を検討しました。このときは、がんそのものに原因がありましたが、患者さまの悩みに対して、複数の原因が想定されることもあります。そのため、多面的に分析しながら薬剤師と密な連携をとることで、薬局としての患者さまへの最適なサポートを探っていけると考えています。管理栄養士が介入しづらい場合もあれば、逆に薬剤師から強く介入を要望される場合もありますね。もちろん病院側での対応が必要になる場合もありますので、その際は病院側に連絡するなど連携をとるよう動いています。」

「まだまだ薬局に管理栄養士がいることはよく知られていないように思います。社内では、がん患者さまへの対応が多い管理栄養士同士で、定期的に情報を共有しています。患者さま一人ひとり状態が異なるので、症例のシェア・検討は非常に大切です。数多くの症例や知識を得ることが、私の目の前の患者さまに対してできることを変えていきます。これからもがん患者さまの生活を支えていけるよう、薬局の管理栄養士としての役目を果たしていきたいと思います。」

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薬局にいないときも“つながって”患者さまの健康をサポート

お薬を正しく使うことは、治療においてとても重要です。間違った使い方をすると効果が薄れたり、健康を害したりする恐れもあります。そのため、日本調剤の薬局では、薬剤師から患者さまにお薬の適切な使用法や、副作用などの情報をお伝えした上でお薬をお渡ししています。そして2020年9月、お薬をお渡しするときだけではなく、服薬期間中にもフォローを行うことが義務付けられました。具体的には、必要に応じて患者さまのお薬の使用状況を継続的かつ的確に把握し、必要な情報提供や指導を行うことが定められました。なぜ服薬期間中のフォローが義務化されたのか、その背景をお伝えするにあたって、まずは「医薬分業」についてお話しさせていただきます。

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