船上にいてもスムーズな医療を。内航船員の生きるに向き合う

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2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により多くの企業でテレワークが取り入れられて勤務形態が多様化し、中には就業環境が大きく変わった企業もあるでしょう。一方、日常生活においては、マスクやトイレットペーパー、アルコールスプレーなどの物資が入手しにくくなり、その需要に応えるため、物流・配送業に注目が集まりました。

そのような中、日本国内の貨物輸送を担って私たちの日常生活や医療などに物資を流通させている「内航船」をご存じでしょうか。オンラインの普及により、私たちの就業環境や生活は大きく変容しましたが、その内航船員を取り巻く環境も、今変わろうとしています。

今回は、私たちの生活を支える内航船員と日本調剤グループとのコラボレーション事例をご紹介いたします。

内航船員のおかれる現状

輸送機関別貨物輸送量の割合円グラフ
国土交通省 交通関係統計資料をもとに当社作成

国内貨物輸送のうち、内航海運は全体の4割(トンキロベース)を占める重要なインフラです。その船員は社会機能を支えるエッセンシャルワーカーとして、重要性が再認識されています。

内航海運に従事する船員の就業環境に目を向けると、3カ月間乗船を続け、その後1カ月間が休暇といった勤務体系が主流となっています。その航海中はいつどこの港に寄港できるかが直前まで

分からないという不規則なスケジュールとなることも多いため、陸上に上がっての予定を立てることは困難だといえるでしょう。

船員の疾病発生率の棒グラフ
国土交通省海事局 令和2年度 第8回「船員の健康確保に関する検討会」参考資料をもとに当社作成

また、陸から離れた船舶という特殊環境下で長期間勤務する船員の平均疾病発生率は、陸上労働者の疾病率と比較して2倍近く高いというデータがあります。

【 船内環境 】

● 台風や高波など、天候によって揺れが生じる

● 家族や社会と長期にわたり切り離された生活

● 狭い船内での生活

上記のような要因から船内生活はストレスが溜まりやすい環境だともいわれており、内航船員の健康確保の必要性についても焦点が当てられています。

内航船員の健康確保に向けて

内航船員の健康確保に向け、2022年4月に施行された「改正船員法」では船舶所有者に労務管理責任者の選任等が義務付けられました。さらに2023年4月には船員の健康確保に向けた新たな制度が導入される予定となっています。

そのような中、日本調剤、ゼクト、東京都千代田区にある三楽病院が協働して慢性疾患を抱える内航船員の治療・服薬をサポートする体制を整備し、2022年10月に八重川海運の内航船員を対象とした、本邦初となるオンライン診療・オンライン服薬指導の事例を行いました。

船上でのオンライン診療・オンライン服薬指導のフロー

内航船上のオンライン診療・オンライン服薬指導から処方薬受取までのフロー図

① 運航中の内航船と医療機関をつないでオンライン診療

② 医療機関から日本調剤の薬局へ処方箋を送信

③ 運航中の内航船と日本調剤の薬局をつないでオンライン服薬指導を実施

④ 寄港前日までに到着するよう、寄港地または海運事業者拠点へ処方薬を配送

⑤ 寄港したタイミングで処方薬受け取り



初事例に参加された八重川海運の内航船員の患者さまからは、以下のご感想が寄せられました。

ノートPCに向かって敬礼をする船乗り

オンライン診療・オンライン服薬指導を初めて経験しました。実施前には不安もありましたが、医師・薬剤師の顔を見てお話ができるので安心感もあり、スムーズに行うことができました。

これまでは、寄港のタイミングで船を離れて病院へ出向くとなると、緊急連絡等ができなくなり、他の船員に負担が掛かるのでは……という不安を抱えていたのですが、職場である船を離れることなくお薬の受け取りまで完結することができるのでとてもありがたいと感じました。

運航中も安心して治療・服薬を続けられること、そして体調に不安を感じた際には医師や薬剤師に相談ができることは、特殊環境下で働く内航船員にとって非常に重要です。運航中にお薬が不足した場合や処方量の調整が必要になった際にも速やかに対応して、内航船員の皆さまの健康をサポートいたします。


日本調剤では今後もオンライン服薬指導を推進し、内航船をはじめ、医療が届きにくい場所への医療アクセス向上に努めてまいります。

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