プレアボイド事例紹介

プレアボイドとは、Prevent and avoid adverse drug reaction(薬による有害事象を防止・回避する)という英語を元にした造語です。薬剤師が患者さまからお伺いしたお話や、症状の経過などを注意深く観察することで、副作用を回避・軽減し、より良い治療になるよう薬学的な介入をした事例のことをプレアボイド事例と言います。

こちらでは、日本調剤の産休・育休代替薬剤師派遣サービスで全国の病院に派遣中の薬剤師が、その専門性を発揮して薬物療法の安全性を守ることができた事例の一部をご紹介します。

さらに多くの事例を掲載した資料もご用意しております。

ケース01:内服薬⇒注射剤切り替え時の用法用量チェック

もともとイーケプラ錠(一般名:レベチラセタム錠)1回750mg1日2回で内服されていた患者さま(70歳代男性)の処方について、薬剤師がカルテを確認した際、1回500mgの点滴に変更されていたことに気づきました。

添付文書によると、通常、内服薬から注射剤に切り替える場合、同じ用量及び投与回数に変更と記載があるため、疑義照会を行いました。


<処方変更>

イーケプラ点滴静注500mg 1バイアル1日2回 朝夕

イーケプラ点滴静注500mg 1.5バイアル1日2回 朝夕 に増量

薬剤師より

内服薬⇔注射剤の切り替えを行う際は、同じ成分であっても、投与した薬剤のうちどれだけの量が全身に循環するか(=バイオアベイラビリティ)の差を考慮する必要があります。イーケプラの場合は内服薬と注射剤のバイオアベイラビリティがほぼ同じであるため、同量投与が推奨されています。この事例では本来注射剤も1回750mgで投与すべきところが500mg投与となっていました。

イーケプラは抗てんかん薬であり、誤って減量すると効果不十分で症状が発現するリスクがありましたが、発作の誘発を未然に防ぐことができました。

ケース2:点眼薬による抗がん剤副作用の悪化リスクを回避

抗がん剤治療中の患者さま(60歳代女性)に、ヒアレイン点眼液(一般名:精製ヒアルロン酸ナトリウム液)が処方されました。抗がん剤の副作用に対する処方である可能性を考え、担当医に確認。この場合ヒアレイン点眼ではさらに炎症が悪化する可能性があることを説明し、人工涙液でのウォッシュアウト(洗い流し)および眼科の早期受診を提案しました。


<処方変更>

ヒアレイン点眼液 1日数回

ヒアレイン点眼液 中止

人工涙液 追加


薬剤師より

抗がん剤の副作用の一つに流涙(涙目)があります。ヒアレイン点眼液は粘性がありドライアイなどで角膜や結膜が傷ついているときによく用いられる薬ですが、涙に含まれた抗がん剤を滞留させてしまうためかえって逆効果になると考えられます。

適切な薬剤変更により、副作用の悪化を未然に防ぐことができた事例です。

ケース3:薬剤の中止および再開時期について検査値を元に提案

心房細動の既往があり、血栓症の発生抑制を目的にイグザレルト錠(一般名:リバーロキサバン錠)が処方されていた患者さま(80歳代女性)。薬剤師が入院後の採血結果を確認したところ、腎機能が低下していたため、医師に中止を提案しました。後日の採血で腎機能が改善していることを確認し、改めて投与の再開について確認、元の用法用量で再開となりました。


<処方変更>

【中止中】イグザレルト錠10mg 1錠 朝食後

【再開】イグザレルト錠10mg1錠 朝食後


薬剤師より

腎機能の指標となるクレアチニンクリアランスが15mL/minを下回った場合、イグザレルト錠は禁忌となります。この事例では採血結果の推移やカルテを確認したうえで、脱水による一時的な機能低下である可能性を薬剤師が考慮しており、適切な時期に有益な薬剤を再開することで血栓リスクを軽減することができました。

このように病態によっては一時的に悪化した検査値が回復する場合もあります。薬剤師が継続的に介入することで、検査値等の臨床所見と投与薬剤を把握しながら、薬剤の中止および再開を適切なタイミングで提案できた事例です。

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