腎臓は健康維持に欠かせない臓器!慢性腎臓病について学ぼう【栄養だより2023年3月号】

栄養のはなし

肝臓の模型を両手で持っている人
日本調剤の薬局(一部のみ)では、季節に合わせた健康情報をお届けする情報紙として、毎月「栄養だより」を配布しています。ご自身の食事や健康に興味を持ち、生活習慣を見直すきっかけにしてもらいたいという思いから、管理栄養士が健康に関する情報を発信しています。その中から一部内容を編集してご紹介します。

慢性腎臓病ってどんな病気?

慢性腎臓病(CKD)について知っていますか?腎臓には体内の余分な水分や塩分、老廃物などをろ過して尿として体外へ排出する働きがあり、その機能は年齢とともに低下してしまいます。慢性腎臓病は、腎機能の低下が慢性的に続く状態のことを指し、初期には自覚症状が乏しいといわれています。

今回は新たな「国民病」ともいわれる慢性腎臓病についてご紹介します。

慢性腎臓病の早期発見・早期治療のためにチェックすべき検査値

日本での慢性腎臓病の患者数は、約1,330万人(およそ8人に1人)と推計され、放置しておくと、末期腎不全となって人工透析や腎移植が必要になります。また、慢性腎臓病の患者は心臓病や脳卒中などの心血管疾患になりやすいことも分かっています。

慢性腎臓病の早期発見・早期治療のためには、健康診断や定期検査で以下の検査数値を確認することが大切です。

健康診断の検査項目が記載された用紙とペン

【血液検査】血清クレアチニン値

血液中の老廃物質の一つであるクレアチニンは、腎機能が低下しているとろ過されず、そのまま血液中に蓄積されます。血清クレアチニン値を元に推算される糸球体ろ過量(eGFR)も併せて確認してみましょう。


【尿検査】尿中たんぱく質濃度

市販の尿試験紙でも手軽にチェックできます。

慢性腎臓病の治療法と原因

慢性腎臓病の治療法として、人工的に血液中の余分な水分や老廃物を取り除き、腎臓に代わって血液をきれいにする「透析」という方法があります。日本の透析患者は2020年末時点で34万人を超えており、透析治療の医療費は、患者1人あたり年間で約480万円かかっているといわれています。

慢性腎臓病となる原因は、生活習慣病を筆頭にさまざまありますが、人工透析に至る合併症として一番多いのは「糖尿病性腎症」です。

2021年末時点での慢性透析患者の原疾患割合を表す円グラフ

「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」と併せて、糖尿病の三大合併症の一つとされている糖尿病性腎症は、高血糖の状態が続くことで腎臓のフィルターが詰まり、血液のろ過がうまくできなくなる疾患です。糖尿病性腎症の発症を防ぐためにも、糖尿病の方は、良好な血糖値を維持するよう心掛けましょう。

慢性腎臓病を予防しよう!3つの生活習慣

匙いっぱいに盛られた塩

【1】塩分の摂り過ぎに注意する

塩分の摂り過ぎは高血圧を招き、腎機能の低下につながるといわれています。酢や香辛料などの調味料を使用することで、塩味が少なくても物足りなさをカバーすることができ、減塩につながります。

お腹の脂肪が気になるシャツ姿の男性

【2】肥満を予防・改善する

肥満になると、腎臓に流れる血液量が増加し、腎臓の負担が大きくなってしまいます。また肥満は、血糖値の上昇を抑えるホルモンであるインスリンの働きを悪くするため、腎臓病と関係が強いとされている糖尿病を予防するためにも、改善することが大切です。

「NO SMOKING」と書かれたプレート

【3】禁煙する

喫煙は動脈硬化を促進し、慢性腎臓病をはじめ、生活習慣病やメタボリックシンドロームの危険因子になるといわれています。

管理栄養士のお悩み相談部屋

腎機能が低下しているため、カリウムの摂取量が制限されています。カリウムを豊富に含む野菜類やきのこ類を食べる方法はあるのでしょうか。

腎機能の低下により、食事で摂ったカリウムを尿中へ排せつしにくくなっているのですね。

野菜類やきのこ類を含め、それぞれの食材に合った方法で調理することでカリウム量を減らすことができますよ。

食事制限のある方は、医師の指示に従いましょう。

カリウム量を減らすポイントと調理方法

カリウム量を減らすために、野菜類やきのこ類は一口大のサイズに切ってから、水にさらしたりゆでこぼしたりして調理しましょう。例として、食材ごとの調理方法とカリウムの減少率をご紹介します。

ほうれん草、キャベツ

ゆでる:約46%減

水さらし:約9%減

にんじん、ごぼう

ゆでる:約20%減

水さらし:約41%減

かぼちゃ、なす

ゆでる:約14%減

他の調理法:ほとんど減らない

えのき、しいたけ

ゆでる:約34%減

焼く:約4%減

また果物を食べる際は生ではなく、缶詰を使用することがおすすめです。ただしゆで汁やシロップにはカリウムが溶け出ているので、調理には使用しないよう気を付けましょう。
  • 野菜を持ってる管理栄養士
    日本調剤の「認定栄養ケア・ステーション」では、地域密着型の栄養ケアの拠点として幅広く手厚いサポートを行っています。処方箋をお持ちでない方でも、腎臓病に関する食事療法のご相談や献立の考案も承りますので、ご相談ください。また、薬局にご来局いただかなくても、オンライン栄養相談で皆さまの食事・栄養をサポートできるようになりました。詳しくは、お近くの薬局スタッフまでお気軽にお声掛けください。
栄養だより2023年3月号(PDF)

【参考文献】NPO法人日本腎臓病協会.”慢性腎臓病について”.https://j-ka.or.jp/ckd/,NPO法人日本腎臓病協会.”腎機能をチェックしましょう”.https://j-ka.or.jp/ckd/check.php,一般社団法人全国腎臓病協議会.”予防法について”.https://www.zjk.or.jp/kidney-disease/prophylaxis/,一般社団法人全国腎臓病協議会.”透析治療にかかる費用”.https://www.zjk.or.jp/kidney-disease/expense/dialysis/,全国健康保険協会.”1月 腎機能が気になったら”.https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat510/h31/20101/,一般社団法人日本透析医学会.”わが国の慢性透析療法の現況”.2021年12月31日.https://www.jsdt.or.jp/dialysis/2227.html,オムロン ヘルスケア株式会社.”怖い!3大合併症”.https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/guide/diabetes/04.html,一般社団法人日本透析医学会,”透析療法について”.https://www.jsdt.or.jp/public/2123.html,医歯薬出版株式会社.”腎臓病食品交換表第9版 治療食の基準”.2016年9月,株式会社ヘルシーネットワーク.”カリウム・リンの制限”.ヘルシーネットワークナビ.https://www.healthynetwork.co.jp/navi/byouki-column/jinzou/jinzou006/,キッセイ薬品工業株式会社.”腎臓の働き~透析療法とは?”.~笑顔でいきいき~透析新ライフ.https://www.kissei.co.jp/dialysis/about_dialysis/cure.html(閲覧日:2023年2月13日)

関連するタグ

関連記事

次の記事
運動習慣を見直してフレイルを予防!フレイルチェックイベントin佐古薬局
日本調剤トップ お役立ちコラム 栄養のはなし 腎臓は健康維持に欠かせない臓器!慢性腎臓病について学ぼう【栄養だより2023年3月号】