症状が出てからでは遅い?! 肝臓の健康について考えよう【栄養だより2022年6月号】

栄養のはなし

日本調剤の薬局（一部のみ）では、季節に合わせた健康情報をお届けする情報紙として、毎月「栄養だより」を配布しています。ご自身の食事や健康に興味を持ち、生活習慣を見直すきっかけにしてもらいたいという思いから、管理栄養士が健康に関する情報を発信しています。その中から一部内容を編集してご紹介します。

肝臓の働き

肝臓には、私たちが生きていく上で重要な働きがいくつもあり、その働きは大きく次の３つに分けられます。

【代謝】　食べ物から摂った栄養素を体で使える形に変え、貯蔵、供給する働き　

【無毒化】　アルコールや薬、有害物質などを分解する働き　

【胆汁をつくる】　腸内での消化吸収に必要な胆汁をつくる働き

これらの肝機能が障害を受ける病気、それが肝臓病です。

「沈黙の臓器」肝臓

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、障害が起こっても症状が現れにくい臓器です。そのため症状が出てからでは遅く、早期発見することが大切です。早期発見のためにも、症状がなくても定期的な肝機能検査を行いましょう。

肝臓病の種類

脂肪肝

脂肪肝お酒の飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足などによって肝臓内に中性脂肪がたまった状態

アルコール性肝炎

脂肪肝の状態でさらに大量の飲酒をし、肝臓が炎症を起こした状態

肝硬変

B型・C型肝炎ウイルス感染、過栄養、多量・長期飲酒、自己免疫などにより起こる慢性肝炎が徐々に進行し、組織が繊維化して硬く小さくなった状態

肝臓病の進行

肝臓病を主な原因別にみるとウイルス性、薬剤性、アルコール性などがあり、自覚症状がなくても病態が進んでいる可能性もあるため注意が必要です。

肝臓病自覚症状チェック

症状が現れにくい肝臓病ですが、以下のような症状があると言われています。肝臓病以外でも起こりうる症状ですが、チェックしてみましょう。

□　倦怠感・疲労感

□　足がつる

□　体がかゆい

□　食欲不振・体重減少

倦怠感や食欲不振はかぜによく似た症状です。思い当たる方は医師に相談しましょう。

脂肪肝について知り予防しよう！

脂肪肝は、食生活の欧米化や運動不足がもたらした現代病であり、日本人の一般成人のうち約20％もの人が罹患していると言われています。

脂肪肝の症状とは？

脂肪肝は自覚症状がほとんどないため、採血検査結果のAST値・ALT値・γ-GTP値の異常が認められて発見されることが多いです。その後、腹部超音波やCT検査で異常がみられることにより脂肪肝と診断されます。

それぞれの検査項目ごとの基準値を確認してみましょう！

AST（GOT）

正常：30U/L以下

要注意：31U/L～50U/L

異常：51U/L以上

ALT（GPT）

正常：30U/L以下

要注意：31U/L～50U/L

異常：51U/L以上

γ-GTP

正常：50U/L以下

要注意：51U/L～100U/L

異常：101U/L以上

脂肪肝を予防するには？

普段の生活で体を動かす工夫をしたり、運動習慣を身に付けて健康なうちから予防を心掛けることが大切です。健康推進のため、そして脂肪肝の予防のために活発なウォーキングをおすすめします。

＼ウォーキングのポイント／

・大股で地面を力強く蹴って歩く
・うっすらと汗ばむ程度に早歩きをする
・息が弾むぐらいのペースで歩く

1日30分以上続けると予防につながります！

管理栄養士のお悩み相談部屋

脂肪肝と診断されたのですが、外食やコンビニで食事を購入する際にはどんなことに気を付ければいいの？

脂肪肝の方は、脂質と糖質を摂り過ぎないように注意が必要です。外食やコンビニ利用時は、次の３つのポイントに注意して食品を選択しましょう。

【ポイント１】主食と主食の組み合わせは避ける

おにぎりと総菜パン、カップ麺とホットスナックなどの組み合わせでは、肝細胞の修復に必要なたんぱく質や、糖質や脂質の代謝に必要なビタミンなどの栄養素が不足してしまいます。外食やコンビニ利用時でも主菜や副菜を組み合わせることを意識しましょう。

サラダチキン、具入りスープ、サラダ、野菜スティック、煮物などを主食に組み合わせるのがよいですね。

【ポイント２】菓子パンを食事代わりにしない

菓子パンのみの食事は脂質や糖質の摂り過ぎになりやすく、たんぱく質も不足してしまいます。パンを選ぶ場合にはサンドイッチをはじめ、卵やツナ、野菜が入ったものを選択しましょう。

【ポイント３】特殊食品を活用する

ノンオイルドレッシングや、低糖質食品・飲料などを選択し、脂質や糖質を摂り過ぎないようにしましょう。

日本調剤の「認定栄養ケア・ステーション」では、地域密着型の栄養ケアの拠点として幅広く手厚いサポートを行っています。処方箋をお持ちでなくても、脂肪肝予防の食事のご相談や献立の考案など承りますのでご相談ください。

お近くの認定栄養ケア・ステーションを探す

栄養だより2022年6月号（PDF）

【参考文献】全国健康保険協会.”【肝臓の病気】肝臓には痛みなどを感じる神経がありません”.https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat450/sb4502/p018/,厚生労働省.”アルコールと肝臓病”.e-ヘルスネット.https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-002.html,オムロンヘルスケア株式会社.”肝疾患の三大症状と「かゆみ」の最新治療”.https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/topics/157.html,公益財団法人長寿科学振興財団.”脂肪肝”.健康長寿ネット.https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/shokakishikkan/shibokan.html,公益社団法人日本人間ドッグ学会.”検査表の見方”.https://www.ningen-dock.jp/public/method,株式会社創新社.”危険な「脂肪肝」は3つの方法で改善できる　肥満でない人も要注意”.糖尿病ネットワーク.https://dm-net.co.jp/calendar/2017/026793.php,公益財団法人長寿科学振興財団.”健康長寿に効果的なウォーキング”.健康長寿ネット.https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka-yobou/haya-aruki.html,農林水産省.”「日本型食生活」のススメ”.https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/nihon_gata.html,MSD株式会社.”かしこく改善！”脂肪肝”の方の食事”